愛が霧の中に消える夜——濃霧に消えて君を忘れる 10 ドラマ

濃霧に消えて君を忘れる 10 ドラマ の第10話は、誤解が誤解を生み、愛がすれ違い、絶望の中で静かに終焉へと向かう物語の転換点である。藤沢清和は、たとえ愛が報われなくとも、彼の幸せを願って身を引こうと決意する。しかし、彼女が知らないところで、斯就の心にも変化が生まれ始めていた——だが、それはあまりにも遅すぎた。

斯就は本当に清和を愛していなかったのか？もしそうなら、どうして彼女の姿が見えなくなった途端、家の中がこんなにも寒々しく感じるのか？この問いが彼を苦しめる。だが、プライドが邪魔をし、自分の本当の気持ちを認めることができない。一方、清和もまた、愛する人のために去ることが「正しい選択」だと信じながらも、その痛みから逃れられずにいた。

このエピソードでは、二人の間に横たわる感情の深淵が、より鮮明に描き出される。愛しているのに離れなければならない運命の残酷さ、信じていた人からの冷たい仕打ちに傷つきながらも、その人の幸せを願わずにはいられない矛盾。感情のうねりが視聴者の心を強く揺さぶる展開となっている。

封じ込められた感情——濃霧に消えて君を忘れる 10 ドラマ

清和の決意は固い。荷物をまとめ、長年過ごした家を後にしようとしていた。彼女の胸の内では、「彼が幸せならそれでいい」という言葉を何度も繰り返す。しかし、本当にそれが正しいのか？彼女の足は、玄関先でわずかに躊躇う。

その瞬間、扉の向こうから斯就の声が聞こえた。

「出て行くのか？」

低く、しかし明らかに揺れる声だった。

清和は一度目を閉じ、心を落ち着かせるように深呼吸をした。そして、振り返らずに答える。

「ええ、おじちゃんの邪魔をしたくないから。」

斯就の表情が曇る。だが、次の言葉が出てこない。彼は、自分が引き止める権利などないと思っていた。いや、本当は引き止めたいのに、その理由をまだ受け入れることができなかった。

結局、斯就は無言のまま彼女の背中を見送ることしかできなかった。

静寂が残すもの——濃霧に消えて君を忘れる 10 ドラマ

清和が去った家には、異様な静けさが広がっていた。彼女がいた時は、何気ない笑い声や、食器の音、彼女が読んでいた本のページをめくる音が聞こえていたのに——今は何もない。

斯就はふと、清和がよく座っていたソファに目を向ける。そして無意識に、そこへ歩み寄って座った。彼女の温もりが、まだそこに残っているような気がした。

手を伸ばすと、小さなメモが置かれていた。

「おじちゃん、今までありがとう。私はあなたを愛しています。」

斯就の胸が締め付けられる。何度も繰り返し読んでは、手を震わせる。しかし、彼の心はそれを認めようとはしなかった。

「何を馬鹿なことを……」

呟きながらも、彼の指は無意識にメモを強く握りしめていた。

揺らぎ始める心——濃霧に消えて君を忘れる 10 ドラマ

斯就は何事もなかったかのように仕事に向かおうとした。だが、なぜか集中できない。書類に目を通しても、言葉が頭に入ってこない。彼の思考は、たった今去っていった少女のことばかりを巡っていた。

彼女の笑顔が浮かぶ。

「おじちゃん、今日のご飯、私が作ったんだからちゃんと食べてよ！」

あの、屈託のない笑顔。

しかし、次の瞬間、それが涙に濡れた顔へと変わる。

「おじちゃんは……私のことが嫌いなんだね。」

彼の心臓が、ひどく痛んだ。

斯就は深く息を吐き、乱雑にネクタイを緩めた。何をしているんだ？どうしてこんなに彼女のことばかり考えている？

それは、答えを知りたくない問いだった。

愛が消えた世界で——濃霧に消えて君を忘れる 10 ドラマ

清和は空港の待合室で、遠くを見つめていた。

飛行機が飛び立つ音が聞こえる。今、自分もこの町を離れれば、すべてが終わる。斯就への想いも、彼との思い出も、もう過去のものになる。

だけど——

心の奥底では、彼が追いかけてくるのではないかという期待があった。バカみたいな幻想。でも、彼女は最後の望みを捨てることができなかった。

そんな時、空港のアナウンスが流れた。

「ご搭乗のお客様は、搭乗口へお進みください。」

清和は立ち上がった。

彼は来ない。もう、終わりだ。

その瞬間——

「清和！」

人混みの中から、彼の声が響いた。

清和の目が大きく見開かれる。彼女がゆっくり振り向くと、そこには、息を切らせながらも、真剣な眼差しで彼女を見つめる斯就の姿があった。

「行くな……！」

果たして、斯就はこの想いを伝えられるのか？そして、清和の心は再び彼に向くのか？

第10話は、愛と誤解、そして運命の糸が絡み合う、最も切なくも美しいエピソードの一つとなった。